
兜の中には、前立に龍を差し込んでいるものも多くあります。
また兜だけでなく、屏風などにも吉祥の象徴として描かれていますね。
今回は龍についてお話ししていきます。
◆龍とは
龍(竜)とは架空の生き物の一つで、古くから多くの人を魅了してきました。
世界中に龍にまつわる工芸品や絵画などが存在し、神話は各国で語り継がれています。
大きく分けると東洋の龍(竜)と西洋の龍(竜)が存在します。
龍は英語でドラゴンと訳されるため、同じ生き物を指していると思われがちですが、実は両者は全く違います。
一つずつ見ていきましょう。
◆東洋の龍(竜)
まずは東洋の龍(竜)。
身体は大蛇に似ており、背に八一枚の鱗(うろこ)、四足に五本の指、頭には二本の角、顔は長く耳があり、
口辺に長いひげを持つのが特徴です。
天と地を自由に行き来しますが、羽は生えていません。
地域により指の本数など見た目に多少違いがありますが、日本や中国をはじめとするアジア圏でよく見られる姿です。

兜に用いられる龍もこのタイプがほどんどではないでしょうか?
鯉のぼりの由来となっている登竜門伝説も、激流の滝を上りこの龍の姿になると伝えられています。
一般的に縁起の良い生き物として古くから崇められており、神社仏閣や工芸品、開運グッズにも取り入れられています。
◆西洋の龍(竜)
もう一つは翼と爪と蛇の尾をもつ爬虫類で、口から火を吐くとされる竜。
英語ではドラゴンと言い、古代ギリシャ語のドラコーンに由来しています。
ドラゴンは空を飛ぶための羽が生えています。
欧米圏でよく目にするのはこの姿ではないでしょうか。

またゲームやアニメで敵として登場する際は、全てではありませんがこのタイプが多いかと思います。
日本の甲冑に取り入れられているのは見た事が無いですね…ご覧になったことのある方は是非ご一報下さい。
アジア圏とは反対に、一般的に昔から邪悪な生き物として恐れられてきました。
その証拠に、ドラゴンが聖人たちに成敗される神話や西洋絵画が数多く残されています。
◆なぜこんなにも違うの?
架空の生き物で、空を飛び、世界中でテーマとして扱われている。なのになぜこんなにも捉え方が違うのでしょうか?
それは、由来が異なるからなのです。
東洋の龍(竜)は様々な動物と共に自然現象、特に水が元になったと言われています。
水は大雨や洪水など人間の命に関わるほどの被害を与える存在でもありながら、同時に天の恵みや潤いを与えてくれる、
人間の生活には欠かせないものでもあります。
それに畏敬の念を持ち、龍神信仰として崇められるようになりました。
特に水を司る神として崇められ、水源の確保や農業の繁栄、豊穣や豊漁を願うご神体として祀られていきました。

一方で西洋のドラゴンはヘビが元となったと言われています。
ヘビは旧約聖書に記されているアダムとイブをそそのかした存在でもあることから、
キリスト教では悪いものと考えるようにより、ドラゴンも悪という分類となりました。
また様々な伝承や逸話や絵画などから発展していき、蛇だったものに脚が付き、羽が生え、
私たちが想像する姿になったとされています。

※勿論ヤマタノオロチのような悪いとされる龍も、ウェールズの国旗のレッドドラゴンのように善いとされるドラゴンも存在します。
同じ龍でも姿形や意味合い、そして由来も違ってくるのですね。
是非皆さんの周りの龍(竜)やドラゴンを探してみて下さい。
最後までご覧いただきありがとうございました。